2022年1月に発効したRCEP(地域的な包括的経済連携協定)は、ASEAN諸国を中心に、日本・中国・韓国・豪州・ニュージーランドなど世界のGDPの3割を占める巨大経済圏を形成しました。
本記事では、RCEP発効によって中国の輸出入ビジネスがどう変わるのか、
特に日本企業にとっての関税・サプライチェーン・取引チャンスの影響について、初心者にもわかりやすく解説します。
目次
✅ RCEPとは?基礎からおさらい
RCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership)とは、**世界最大の自由貿易協定(FTA)**です。
RCEPについては下記の記事をご覧ください。
▶ 加盟国(15か国)
- ASEAN10カ国(シンガポール、タイ、インドネシア等)
- 日本、中国、韓国
- オーストラリア、ニュージーランド
▶ RCEPの目的
- 関税の撤廃・削減
- ルールの共通化(原産地・通関・投資)
- 域内サプライチェーンの促進
✅ 中国の輸出入におけるRCEPの主な変化
項目 | 内容 |
---|---|
関税の段階的削減・撤廃 | 対日本・韓国などの輸入関税が一部即時ゼロに |
原産地ルールの簡素化 | 加工品・複数国製品でも「累積原産地」で特恵適用 |
電子データによる通関 | 通関手続きの迅速化(事前申告・簡素化) |
サービス貿易の拡大 | デジタル貿易・投資環境がより開放的に |
✅ 中国→日本の輸出における主な恩恵(例)
商品カテゴリ | RCEP前 | RCEP後(段階的) | 影響 |
---|---|---|---|
工業製品(部品・機械) | 関税あり(例:3~5%) | 関税撤廃 | 中国企業の競争力UP |
衣類・繊維 | 平均10%前後 | 一部即時撤廃・一部段階削減 | アパレルOEMのコスト減 |
農産加工品 | 関税あり(調味料など) | 一部撤廃対象外 | 影響は限定的 |
📍 中国製品の日本市場への価格優位性が高まる → 日本国内製造業の競合圧力が上がる
✅ 日本→中国の輸出にも追い風
対象 | 関税削減の影響 |
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日本製機械・部品 | 精密機器・自動車部品の関税が段階的にゼロへ |
日本酒・食品加工品 | ブランド力+関税ゼロで輸出拡大に期待 |
デジタル関連製品 | 知財・投資ルールの共通化で展開しやすく |
📍 日本企業は中国市場での販売拡大・新規取引獲得が見込まれる
✅ 実務で押さえるべきRCEP利用の流れ(簡略版)
- 輸出入対象品目のHSコードを確認
- RCEP関税率の適用可否を確認(関税協会サイトなど)
- 原産地証明の準備(自己証明 or 商工会議所)
- インボイス・パッキングリストへ記載
- 税関でRCEP適用申告 → 関税削減へ
✅ 「累積原産地ルール」に注目
RCEPでは、部品や材料がRCEP加盟国で調達されていれば、最終製品に累積して原産性を認める制度があります。
例)
中国で最終組立 → 日本製部品+韓国製素材でも「RCEP原産品」として関税優遇が適用可能
📍 多国籍サプライチェーンの構築がしやすくなる
✅ 日本企業が今からできること【チェックリスト】
項目 | チェック内容 |
---|---|
取扱品目がRCEPの関税撤廃対象か? | HSコードベースで確認 |
仕入れ原料の原産地は? | 中国・ASEANから調達できるか |
原産地証明の体制はあるか? | 商工会議所発行 or 自己証明制度対応済みか |
顧客への提案に活かせるか? | 「RCEP適用で関税ゼロ」提案で競争力強化 |
輸出用商品をRCEP向けに再設計できるか? | 加工地・組立地の見直しも含め検討 |
✅ 今後の貿易動向:RCEPで何が変わる?
変化のポイント | 内容 |
---|---|
中国の「輸出拡大路線」が加速 | RCEPで東アジアとの取引増加 |
製造業の域内回帰 | 脱グローバル→地域内分業の傾向強まる |
原産地証明のデジタル化が進む | 自己証明や電子原産地証明への移行 |
FTA/EPA活用の標準化 | RCEPは事実上の「アジアの共通関税ルール」へ |
✅ まとめ|中国とRCEP、輸出入の今後に備えよう
ポイント | 要点 |
---|---|
RCEPは世界最大の経済圏FTA | 日本・中国を含む15カ国 |
関税削減で輸出入が活発化 | 工業品を中心に大きな恩恵 |
原産地ルールの簡素化 | サプライチェーン柔軟化が進む |
日本企業にもチャンス | 中国輸出拡大・コスト競争力向上に活用できる |
📝 実務アドバイス
- 中国輸出が主力の企業は、RCEP利用によるコストダウン提案が有効
- 輸入企業は、仕入先選定で関税ゼロを活かせるかを再検討
- 社内で「RCEP活用チェックリスト」や「原産地管理台帳」を整備することでスムーズな運用が可能