輸出ビジネスに携わる中で、意外と見落とされがちなのが「輸出禁止品」や「輸出規制対象品」の確認です。
見落とすと、貨物の差し止め・罰則・信頼喪失・企業名公表といったリスクが発生する可能性もあります。
この記事では、実際に発生した見落とし事例と、輸出前に確認すべき制度・対応フローを、経済産業省・税関対応を含めて詳しく解説します。
目次
✅ 輸出禁止品・規制品とは?
「輸出禁止品」とは、法律上いかなる理由があっても輸出してはいけない貨物です。
一方「輸出規制品」は、一定の条件を満たせば輸出できるが、事前の許可や申請が必要な品目を指します。
📌 主な根拠法令と管轄
法令 | 内容 | 管轄官庁 |
---|---|---|
外為法(外国為替及び外国貿易法) | 戦略物資・技術の規制 | 経済産業省 |
輸出貿易管理令 | 輸出許可が必要な品目の指定 | 経済産業省 |
関税法・関税定率法 | 税関での申告・差止制度 | 財務省(税関) |
ワシントン条約 | 野生動植物製品の規制 | 環境省 |
麻薬及び向精神薬取締法 | 医薬品や薬物成分の取締 | 厚生労働省 |
✅ 見落としが起こりやすい規制品カテゴリー
カテゴリ | 見落とし例 | 理由 |
---|---|---|
電子部品・半導体 | コンデンサやICチップ | 汎用品に見えても軍事転用の可能性あり |
ソフトウェア | 暗号機能を持つ通信ソフト | デジタルデータでも規制対象となる |
工作機械・測定機器 | CNC装置・精密測定器 | 精度次第で規制対象に該当 |
化学品・顔料 | 一部染料や試薬類 | 軍事転用や毒物関連物質に分類されることも |
医薬品・健康食品 | 漢方・サプリメント | 原材料の中に規制対象が含まれる場合がある |
動物・植物製品 | 樹皮つき木材・動物皮革 | 植物防疫法・ワシントン条約対象に該当することも |
✅ 実際にあった見落とし事例(匿名化)
🧪 事例①:化粧品原料が「毒物」に分類され差し止め
概要: 海外のOEM先に送った化粧品サンプルが、税関で検査され「化学品」に分類。輸出前に厚労省の許可が必要と判定。
対応: 成分の安全証明と分析書を提出し、経産省に事後確認 → 再申請後に輸出許可取得。
🛠 事例②:試作用部品が「工作機械部品」として該当
概要: 試作機器の一部パーツを東南アジアに送付する際、税関から「リスト規制(機微技術)」該当の可能性を指摘される。
対応: 経産省への該非判定申請 → 非該当を取得 → 通関再開
✅ 規制品見落としを防ぐための事前確認リスト
チェックポイント | 説明 |
---|---|
商品のスペック・成分を把握しているか | スペック書・SDS・カタログ等を用意 |
HSコードを確定しているか | 税関または通関業者と連携して分類 |
リスト規制・キャッチオール規制を確認したか | 経産省「該非判定ガイドライン」を活用 |
該非判定書を取得したか | 非該当ならその旨、該当なら許可を取得 |
医薬・化学・バイオ製品の場合、厚労省や環境省への確認は済んでいるか | 医薬部外品・動植物なども含む |
輸出先国の規制も確認したか | 現地で輸入できない場合もある(例:中国の禁止品目) |
✅ 規制が疑わしいときの対応フロー(経産省対応含む)
- 商品仕様を入手・確認(カタログ、仕様書、SDS等)
- HSコードを特定
- 経産省の「該非判定」制度を利用(オンライン)
→ 安全保障貿易管理 - 非該当証明書を発行(通関用)
- 該当の場合は輸出許可申請 → 許可取得まで7~14日程度
✅ 輸出許可を取得せずに出荷すると「外為法違反」で6か月以下の懲役・100万円以下の罰金等が科されることがあります。
✅ 税関対応のポイント
対応項目 | 内容 |
---|---|
通関申告時に必要な情報 | HSコード、該非判定書、原産地証明、インボイス等 |
差し止めの原因となりやすい項目 | 記載ミス・不一致(例:品名・数量・成分) |
修正指示が出た場合 | 原則1営業日以内に修正し再申告 |
✅ まとめ:見落とさないために「疑わしきは確認」
ポイント | 内容 |
---|---|
商品の仕様確認 | スペックと構成を深掘りする |
規制品リストの確認 | 経産省・税関のリストやFAQを活用 |
該非判定の取得 | 曖昧な場合は自己判断せず、必ず取得 |
書類整備 | インボイス・P/L・成分表・説明書など一貫性を持たせる |
📝 実務アドバイス
- 通関業者任せにせず、輸出者側が責任を持って製品の本質を把握する
- 輸出先ごとに規制が異なるため、都度の確認が重要
- 海外工場への部材供給・展示会出展・サンプル輸出でも規制対象になり得る