国際取引の現場で必ず登場する言葉「インコタームズ」。
しかし、「FOBとCIFってどう違うの?」「どれを選べばいいの?」といった疑問を持つ方は少なくありません。
この記事では、インコタームズ2020の11条件を初心者にもわかりやすく解説し、使い分けのポイントを図付きで紹介します。
✅ インコタームズとは?
インコタームズ(Incoterms)は、国際商業会議所(ICC)が定めた貿易取引における「売り手と買い手の責任範囲」を明確にするための国際規則です。
具体的には:
- 費用を誰が負担するのか?(運賃、保険、通関など)
- リスクはどのタイミングで移転するのか?
- どこで商品の引き渡しが完了するのか?
を定めています。
✅ インコタームズ2020とは?
最新版は「インコタームズ2020」。これは2020年1月1日より発効されたバージョンで、以下のような変更が加えられました:
主な変更点 | 内容 |
---|---|
DAT → DPUに名称変更 | 「荷下ろし後引渡し」が明確に |
CIF / CIP の保険条件の明確化 | CIF=ICC(C)、CIP=ICC(A)がデフォルトに |
FCAでB/Lの扱いに柔軟性追加 | 船積書類の発行に対応した条項補足が可能に |
CIF / CIP の保険条件やCIF=ICC(C)、CIP=ICC(A)についてはこちらから
【図解付き】CIFとCIPの保険の違いを理解する|ICC(C)とICC(A)を簡単比較
✅ インコタームズ2020:11条件の一覧表(輸送手段別)
条件 | 説明 | 対応輸送 |
---|---|---|
EXW(Ex Works) | 売り手の施設で引き渡し | 全輸送モード |
FCA(Free Carrier) | 指定場所で運送人に引渡し | 全輸送モード |
CPT(Carriage Paid To) | 輸送費込み。買い手に早くリスクが移転 | 全輸送モード |
CIP(Carriage and Insurance Paid To) | CPT+保険付き | 全輸送モード |
DAP(Delivered At Place) | 指定地まで運送。通関は買い手 | 全輸送モード |
DPU(Delivered at Place Unloaded) | 荷下ろしまで売り手の責任 | 全輸送モード |
DDP(Delivered Duty Paid) | 輸入通関も売り手負担 | 全輸送モード |
FAS(Free Alongside Ship) | 本船横に置くまでが売り手の責任 | 海上輸送 |
FOB(Free On Board) | 本船に積み込んだらリスク移転 | 海上輸送 |
CFR(Cost and Freight) | 運賃込み。リスクは本船積込時点で移転 | 海上輸送 |
CIF(Cost, Insurance and Freight) | CFR+保険付き | 海上輸送 |
✅ 条件別の使い分けマップ(図解)
以下は、インコタームズ2020におけるリスク移転のタイミングを「リスク移転図」や「タイムラインマップ」に相当する形で表形式に整理したものです。
売り手から買い手にリスクがどの時点で移るかを時系列で可視化しています。
インコタームズ | リスク移転のタイミング | リスク移転の場所 | 主な輸送手段 |
---|---|---|---|
EXW(Ex Works) | 売り手の施設で買い手に引き渡した時 | 工場・倉庫など売り手拠点 | 全輸送モード |
FCA(Free Carrier) | 指定場所で運送人に引渡した時 | トラックヤード・港・CFSなど | 全輸送モード |
FAS(Free Alongside Ship) | 船の横に置かれた時 | 出港港の岸壁 | 海上輸送 |
FOB(Free On Board) | 本船に積み込まれた時 | 出港港の船上 | 海上輸送 |
CFR(Cost and Freight) | 本船に積み込まれた時 | 出港港の船上 | 海上輸送 |
CIF(Cost, Insurance and Freight) | 本船に積み込まれた時 | 出港港の船上 | 海上輸送 |
CPT(Carriage Paid To) | 最初の運送業者に引渡した時 | 出荷地側のCFS・CYなど | 全輸送モード |
CIP(Carriage and Insurance Paid To) | 最初の運送業者に引渡した時 | 出荷地側のCFS・CYなど | 全輸送モード |
DAP(Delivered At Place) | 指定地に到着した時 | 買い手指定の施設の前 | 全輸送モード |
DPU(Delivered at Place Unloaded) | 荷物を買い手指定地で荷下ろしした時 | 倉庫・工場など | 全輸送モード |
DDP(Delivered Duty Paid) | 輸入通関を終えて届けた時 | 買い手指定地(関税込) | 全輸送モード |
✅ タイムライン風リスク移転イメージ
[売手責任]──EXW──FCA──FAS──FOB──CFR/CIF──CPT/CIP──DAP──DPU──DDP──[買手責任]
このタイムラインは、リスク移転の早い順から遅い順にインコタームズを並べたもので、実務上の責任配分やトラブル時の責任所在を理解するのに非常に重要です。
ポイントを簡潔に整理すると:
目的 | 選ぶ条件 |
---|---|
輸入者側、輸出者側にお任せしたい | DDP または DAP |
輸入者が物流手配に強い | EXW や FCA |
海上輸送で安く済ませたい | FOB や CFR |
保険もつけたい | CIF や CIP |
コンテナ貨物や複合輸送 | FCA / CPT / CIP が推奨 |
✅ 実務上の注意点
- インコタームズのバージョンを契約書に必ず明記する
→ 例:「FOB Kobe, Incoterms® 2020」 - 契約条文と矛盾しないよう注意
→ 契約書が「保険は買い手」と言ってるのにCIFを選ぶと矛盾します。 - 相手企業の実務能力に合わせて選定
→ EXWは輸入者(買い手)側、DDPは輸出者(売り手)側の実務能力が低いと逆にリスクになる。
✅ まとめ
項目 | ポイント |
---|---|
インコタームズとは? | 国際売買契約での責任・リスクの範囲を定めるルール |
インコタームズはなぜ重要? | 契約トラブルを避け、明確な取引条件を設定できる |
2020年版の特徴 | 保険条件明記、DPU新設、FCA補足など |
実務の選び方 | 費用負担・リスク移転・輸送手段に応じて選定 |
📝 次回予告
次回は「【徹底比較】FCAとFOBの違いとは?コンテナ輸送に最適なインコタームズの選び方」というテーマで、コンテナ輸送に合った条件選びを深掘りしていきます!