RCEP(アールセップ)は、2022年1月に発効したばかりの世界最大級の自由貿易協定です。
この記事では、RCEPの基本構造、加盟国、関税削減の仕組み、日本企業への影響などを初心者にもわかりやすく詳しく解説します。


✅ RCEPとは?

**RCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership:地域的な包括的経済連携協定)**は、東アジア・太平洋地域の15か国が加盟する自由貿易協定(FTA)です。

🔸 主な目的:

  • 加盟国間の関税の撤廃・削減
  • 投資・サービス・ルールの統一
  • サプライチェーンの効率化
  • 原産地ルールの緩和

✅ 加盟国一覧(2024年現在)

ASEAN10か国その他加盟国
シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、ラオス、カンボジア、ブルネイ、ミャンマー日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド

インドは当初参加を予定していましたが、2020年に交渉離脱しました。


✅ RCEPの特徴(他のFTAとの違い)

項目RCEP比較例(TPPなど)
加盟国のGDP総額世界の約30%(世界最大)TPPは約13%
関税撤廃率約91%(物品貿易)TPPは約99%
原産地ルール累積ルールありで柔軟各国ごとに厳密
サービス貿易通信・金融など一部自由化TPPより保守的

📍 特に注目すべきは、「原産地累積ルール」の導入です。


✅ 原産地累積ルールとは?

通常、FTAの関税優遇を受けるには「原産品」である必要があります。
RCEPでは、加盟国の部品・加工工程を累積して原産品とみなすことができます。

例:

日本企業が中国製部品+韓国製素材をベトナムで組立 → 「RCEP原産品」として関税ゼロ

📍 域内の多国間サプライチェーンが構築しやすくなります。


✅ RCEPで得られる関税メリット【日本企業向け】

相手国主なメリット(輸出)メリット(輸入)
中国日本製自動車部品・機械が段階的に無税中国からの製品コストが低下
韓国初めてFTA締結。ほぼすべての関税が撤廃対象韓国製化学品・食品の関税減
ASEAN各国食品・日用品などが関税削減対象輸入原材料のコストダウン

✅ RCEPの発効で起きる変化と企業戦略の方向性

1. サプライチェーンの最適化

→ 原料調達・加工地をRCEP域内にシフトすれば、関税削減+原産性確保が両立可能

2. 輸出入コストの削減

→ 関税ゼロ・削減により、価格競争力が強化

3. FTA活用の標準化

→ 今後、RCEPを起点に**「FTA活用は当たり前」**の時代に


✅ 実務でRCEPを活用する手順(簡略フロー)

  1. 対象商品のHSコードを確認
  2. RCEP関税率を調査(税関・関税協会サイトなど)
  3. 原産地ルールを満たしているか確認(累積含む)
  4. 原産地証明書を取得(自己証明 or 商工会議所)
  5. インボイス等に必要記載を反映
  6. 税関でRCEP適用申告 → 関税削減適用へ

✅ よくある質問(FAQ)

Q. どの国でも関税がゼロになるの?

いいえ。品目・国によって「即時撤廃・段階的削減・対象外」があります。
詳細は品目別関税スケジュールで確認が必要です。


Q. RCEPの原産地証明は誰が出すの?

→ 輸出者が「自己証明」できる国と、商工会議所などが発行する場合があります。
例:日本企業が中国に輸出する場合、商工会議所発行のCOが主流です。


✅ まとめ|RCEPを理解し、貿易戦略を再構築しよう

視点要点まとめ
経済規模世界最大のFTA、GDPの約30%をカバー
メリット関税削減・原産地ルール簡素化・通関簡略化
実務対応HSコード確認→証明書取得→原産性証明→関税削減
戦略提案調達先変更・販路拡大・価格提案強化に活用可能

📝 実務アドバイス(企業担当者向け)

  • 輸出部門だけでなく調達・生産・販売まで巻き込んだFTA戦略を立てましょう。
  • Excelで「RCEP活用マトリクス(国×品目×関税率)」を作って社内共有すると便利です。
  • 自社が対象となる商品群を洗い出し、まずは1製品で試験運用→徐々に全社展開がスムーズです。