お米は日本の食卓に欠かせない主食ですが、実は「輸入米」となると話はまったく別。関税は高額で、制度も非常に複雑です。本記事では、お米を輸入する際にかかる関税を、具体的な数字と共にわかりやすく解説します。
目次
お米の基本関税は「402円/kg」
お米を海外から輸入しようとすると、まず大きな壁となるのが関税です。日本ではお米に対して、2024年時点で 402円/kg の定額関税が課されています。これは非常に高く、商業輸入を実質的に阻む水準です。
区分 | 内容 | 関税率 |
---|---|---|
割当枠内(SBS/MA制度) | 農林水産省の枠内で許可された輸入 | 数円〜ほぼ無税 |
割当枠外(自由輸入) | 一般輸入(自由に輸入しようとした場合) | 402円/kg |
WTO協定との関係 ― 関税は「402円/kg」「341円/kg」どっち使うの?
税関の実行関税率表を見ると「402円/kg」と「341円/kg」の二つの金額が記載されています。
この違いは何かというと402円/kgが基本税率で341円/kgは、WTO協定で定められた“税率(Bound Rate)”です。
ですので、
WTOに加盟している国からの輸入であれば341円/kg
それ以外の国から輸入する場合は402円/kg
WTO (世界貿易機関) 加盟国は現在166か国および地域です。ほとんどの場合はWTO協定の税率が適用されます。
WTO加盟国一覧(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/wto/data/kamei.html)
輸入時にかかるその他の税金は?
関税だけでなく、輸入時には消費税(軽減税率:8%)も発生します。
計算式:
消費税額 = (CIF価格 + 関税) × 8%
例:1,000kg(CIF価格100,000円)、基本税率の場合
項目 | 金額 |
---|---|
関税:402円×1000kg | 403,000円 |
消費税(8%) | 40,240円 |
総税額 | 443,240円 |
合計 | 543,240円(1kgあたり543.24円) |
まとめ:お米の関税は高いので平常時のビジネスは難しい
項目 | 内容 |
---|---|
WTO協定税率 | 341円/kg(2025年4月1日現在) |
基本関税率 | 402円/kg(2025年4月1日現在) |
消費税 | 8%(軽減税率) |
輸入ルート | SBS制度など、農水省管理枠内 |
自由輸入の現実 | 税コストが高く、米価格の高騰などがない場合は採算性がほぼない |
おまけ:お米を輸入したり販売するにはここまでやろう
- 米穀の出荷又は販売の事業の届出
1年間に20精米トン以上の米穀の出荷又は販売の事業を行う場合は、主たる事務所の所在地を管轄する地方農政局等に届出をする必要があります。農政局のホームページで届出書類をダウンロードしてFAXを送信するだけなので簡単に届出ができます。 - 取扱数量にかかわらず関連する以下の法令を確認食品表示法
米穀を消費者に販売する場合は、「食品表示基準」に基づき、「名称」、「原料玄米(産地・品種・産年)」、「内容量」、「精米時期」、「販売者」の表示が必要です。
米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律(米トレーサビリティ法)
「米トレーサビリティ法」に基づき、取引等の記録を作成・保存し、産地情報を伝達することが必要です。
食品衛生法
米穀卸売業・米穀小売業を営む事業者は、保健所に営業の届出等を行う必要があります。
詳細は管轄の保健所へお問い合わせください。
主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(食糧法)
用途限定米穀(加工用米や新規需要米等(飼料用米、米粉用米等))は、主食用等への用途外使用が
禁止されています。
参考リンク
最後に
お米の輸入には高い壁があり、日本政府は国内農業保護の観点から実質的な自由輸入を制限しています。この記事が、お米輸入の実態や制度への理解に役立てば幸いです。