貿易業務をはじめると必ず出てくる「通関」という言葉。
聞いたことはあるけれど、具体的にどんな手続きなのか、いつ・誰が・どのように行うのかがわからない…という方も多いのではないでしょうか?
この記事では、**通関とは何か?どんな流れで進むのか?どんな書類が必要なのか?**といった点について、貿易初心者にもわかりやすく解説していきます。
1. 通関とは何か?その目的と役割
「通関(customs clearance)」とは、貨物を輸出入する際に税関で必要な手続きを行うことを指します。
✅ 通関の目的
- 不正な物品の輸出入(麻薬・武器・知的財産侵害品など)を防ぐ
- 関税や消費税を正しく徴収する
- 外貨取引・貿易統計を管理する
通関は、国際物流のゲートウェイとも言える重要なプロセスです。
2. 輸出入の通関手続きの基本的な流れ
ここでは、輸出通関と輸入通関に分けて、流れを紹介します。
【輸出通関の流れ】
- 輸出申告の準備
- 書類の準備(インボイス、パッキングリストなど)
- 税関へ輸出申告(NACCSを通じて)
- 通関業者が代行するのが一般的
- 審査・検査(必要に応じて)
- 一部の貨物はX線検査や実物確認を受ける
- 輸出許可
- 税関が問題なしと判断すれば許可され、船積み・航空積みが可能に
- 貨物出港
【輸入通関の流れ】
- 貨物の到着(港や空港)
- 輸入申告書類の作成・提出
- インボイス、パッキングリスト、船荷証券(B/L)、原産地証明書などを添付
- 税関による審査・検査
- 自動承認されるケースもあれば、書類・実物検査が必要な場合も
- 関税・消費税の納付
- 輸入許可(輸入許可通知書の発行)
- 貨物引き取り・配送へ
3. 通関に必要な書類とは?
通関では、貨物の内容や価値、輸出入条件などを税関に正しく伝える必要があります。そのため、以下のような書類が必要です。
🔹 基本的な書類
書類名 | 内容 |
---|---|
インボイス(Invoice) | 貨物の取引価格や詳細 |
パッキングリスト(P/L) | 梱包単位・数量・重さなど |
船荷証券(B/L)またはAWB | 輸送手段に応じた貨物引渡証 |
原産地証明書(CO) | 関税優遇などの証明 |
輸入許可証・各種申請書類 | 食品・化粧品・医薬品などは別途手続き必要 |
4. 通関を行うのは誰?
多くの場合、輸出者・輸入者本人ではなく、「通関業者(通関士)」が代行します。
通関業者は、NACCSというシステムを使って、申告から納税・検査まで一貫して対応してくれます。
✅ ただし注意:
- インコタームズによって輸出者・輸入者どちらが通関責任を持つか変わります(例:DDPなら売主側が通関まで対応)
5. 初心者が注意すべきポイント
- インボイスの記載ミスは通関遅延の原因になります。
- HSコード(品目分類番号)は正確に記載を。
- 食品や医薬品などは、別途「検疫」「食品等輸入届出」が必要です。
- 非居住者(海外企業)が輸入者となる場合、ACP(税関事務管理人)の登録が必要です。
6. よくあるQ&A
Q. 通関はどのタイミングで始めるの?
A. 輸出では船積み前に、輸入では貨物が到着する前後で行います。
Q. 通関費用はいくらくらい?
A. 貨物の種類・金額・業者によりますが、輸入通関で5,000~15,000円前後が相場です。
Q. 自分でも通関できる?
A. 可能ですが、専門知識・NACCSへの登録・税関対応の経験が必要です。初心者には通関業者の活用が現実的です。
📘 通関関連のよく使われる用語集
用語 | 意味・概要 |
---|---|
通関 | 税関で行う輸出入に関する法的な手続き。 |
NACCS | 輸出入・港湾関連情報処理システム。通関業者がこのシステムを通じて申告。 |
通関業者(通関士) | 通関を代行できる専門業者(有資格者)。 |
インボイス | 商業送り状。貨物の明細・価格・取引条件などを記載。 |
パッキングリスト(P/L) | 梱包単位・数量・重量など、実際の物理的情報。 |
B/L(船荷証券) | 海上輸送で用いられる貨物引渡書類。 |
AWB(航空運送状) | 航空輸送で用いる貨物の輸送契約書。 |
HSコード | 世界共通の品目分類番号。関税率の判定などに使用。 |
関税分類 | 輸入品目をHSコードで分類し、関税率・規制適用を判断。 |
原産地証明書(C/O) | 貨物の原産国を証明する書類。FTA・EPAの適用時に必須。 |
関税 | 輸入時に課される税金。物品の種類により異なる。 |
消費税 | 輸入時にも国内消費税が課される(10%が原則)。 |
輸入差止 | 不適切な書類、不許可商品などにより輸入が停止されること。 |
📊 補足:簡易比較表(輸出 vs 輸入)
比較項目 | 輸出通関 | 輸入通関 |
---|---|---|
主体 | 輸出者(売主) | 輸入者(買主) |
許可タイミング | 輸送前(原則) | 輸送後(貨物到着後) |
関税・税金 | 基本的に課税なし | 関税・消費税が課税される |
リスク | 搭載拒否・許可遅延 | 関税トラブル・検疫差止 |
✅ 通関のポイントをおさらい
- 輸出入には必ず通関手続きが必要
- 通関業者を活用し、正確な書類とスケジュール管理が成功のカギ
- 貨物の種類によって法令対応や検疫対応が追加で必要
- 用語や流れを理解しておくと、貿易実務がスムーズになる
まとめ
通関は貿易において避けて通れない重要なステップです。
初心者にとってはハードルが高く感じられるかもしれませんが、通関の基本的な流れと必要書類を知っておくだけで、実務対応がぐっとスムーズになります。
通関業者とうまく連携しながら、正確な書類とスケジュール管理を行いましょう。
📌 ワンポイントアドバイス:
初めて輸出入を行う企業や個人は、まず「信頼できる通関業者選び」が成功の鍵です。