目次
✅ 1. はじめに:なぜ「磁石」は特別扱いされるのか?
磁石(永久磁石、電磁石、磁気部品を含む)は、国際輸送において「危険品」や「特殊貨物」に分類されることがあります。
🚫 主な理由:
- 航空機の計器類(コンパス、航法機器)に影響を与える恐れ
- 輸送中の他の貨物に対する吸着や破損リスク
- 火花発生源や電磁干渉の要因になる場合もある
このため、国際輸送ではIATA(航空)やIMO(海上)の規制に準拠しなければなりません。
📦 2. 対象となる「磁石を含む製品」の例
製品カテゴリ | 主な該当製品 |
---|---|
家電・電子機器 | スピーカー、ヘッドホン、ハードディスク、モーター |
工業機器 | センサーモジュール、リニアモーター、永久磁石 |
玩具・日用品 | マグネットブロック、磁気おもちゃ、健康器具 |
🔍 見落とされがちなのは「製品内部に磁石が使われているケース」。外見から判断しにくいため、製品設計時から輸送対応を考慮する必要があります。
🌍 3. 航空輸送時の規制(IATA DGR)
磁石製品の航空輸送では、IATA(国際航空運送協会)のDGR=危険物規則書に基づく規制があります。
✈️ IATAが定める磁石分類:
- UN番号なし(ただし磁気強度で制限)
- IATA DGR第3章(Class 9 – Miscellaneous Dangerous Goods)に基づく判断
🔍 実務ポイント:
- 「磁気漏洩(磁場)測定」が必要(輸送用パッケージの中心から2.1mで**0.418A/m(0.00525 gauss)**以下であれば規制外)
- 測定結果により以下に分類:
- 非制限貨物:規制対象外。通常貨物として輸送可能
- 制限貨物(Class 9):危険物としてのラベル・書類・包装が必要
📋 測定結果の添付例:
- 測定機関による磁気漏洩証明書(Magnetic field strength certificate)
- 製造者による技術仕様書・試験結果報告書
🚢 4. 海上輸送時の規制(IMDG Code)
海上輸送では、IMO(国際海事機関)のIMDG Codeに基づく規制があります。
🚢 規制分類:
- 磁石は原則として「Class 9:雑品」に該当するが、UN番号を持たない場合は一般貨物扱いも可能
- 船舶への影響がないと確認できる場合、危険物ラベルは不要
✅ 実務対応:
- 海運会社による事前審査(MSDS・仕様書の提出)
- 梱包内の磁場測定が求められる場合あり
- 危険物申告書(DGD)が必要になるケースも
📦 5. 梱包時の注意点と技術的対策
🧊 梱包で使われる主な対策:
対策 | 内容 |
---|---|
シールド材の使用 | スチール板やパーマロイなどで磁場遮蔽(磁気シールド) |
逆極配置 | 磁石同士を互い違いに配置し磁場を打ち消す |
間隔の確保 | 製品と外壁の距離を広く取り磁場の影響を緩和 |
梱包固定 | 輸送中の吸着・振動を防ぐための緩衝材、固定具 |
📌 実務のヒント:
- 国際宅配業者(DHL, FedExなど)は事前申告なしで磁石貨物を拒否されることもある
- 輸送中に税関で開梱検査されるリスクもあるため、梱包内の構造を図面で示すのが有効
📄 6. 通関・書類上の注意点
通関での申告項目(例):
- HSコード:主に 8505.11(永久磁石) など
- MSDS(製品安全データシート):求められる国あり
- 製品構成表(部品表)や磁場測定証明書
📌 注意したい輸入規制国:
- アメリカ(FDA該当やCBP輸入制限品目あり)
- 中国(CCC認証該当の可能性)
- インド・ブラジル(製品評価制度あり)
🧾 7. よくあるトラブルとその回避策
トラブル事例 | 原因 | 対策 |
---|---|---|
航空便で輸送拒否された | 磁場測定なし/測定結果の未提出 | 測定証明書を準備/条件に応じて陸送+海上へ切替 |
通関で輸入遅延が発生 | 製品が「非申告」だった | パーツ単位での構成情報を申告書に添付 |
他の貨物と吸着し事故に | 磁石の外部露出・梱包不備 | しっかりとしたシールドとスペーシングで対応 |
📘 8. 輸送業者とのコミュニケーションのコツ
- 輸送前に「磁石含有製品」であることを明示
- 航空/海上 どちらで送る予定かを伝える
- 測定証明書・技術仕様書・梱包設計図を用意しておく
- 国ごとの危険物/非危険物の判断基準に対応する
✅ 9. まとめ:磁石は“見えないリスク”に備えるのが正解
磁石を含む製品は、外見ではわかりにくいものの強い磁気を持つことで輸送全体に影響を及ぼす可能性があります。
- 測定 ➜ 分類 ➜ 梱包 ➜ 書類 ➜ 通関 ➜ 輸送手配
この一連の対応フローを社内・サプライヤーと共有しておくことが、リスクとコストを最小化するカギです。