国際物流は、輸出入ビジネスの要となるプロセスです。
しかし、距離・国境・制度・複数の関係者をまたぐため、トラブルの発生リスクが避けられないのも事実です。
本記事では、国際輸送で発生しやすい代表的なトラブルとその具体的な対処法を解説します。
初心者の方はもちろん、すでに実務経験のある方にも「備えておきたい実務チェックリスト」としてご活用いただけます。
目次
✅ よくある国際輸送のトラブル3選
1. 輸送の「遅延」
▷ よくある原因
- コンテナ船のスケジュール変更・遅延(天候・混雑・ストライキ)
- 書類不備による通関の遅れ
- 通関審査・検査に時間がかかる(特に食品・化粧品・医薬品)
- 海外倉庫や港での滞留
▷ 実際の事例
日本からアメリカ西海岸へ輸出した家電製品。港の混雑により予定より2週間遅れで現地に到着。通関にさらに3日かかり、納品が契約納期を越えてしまった。
▷ 対処法・予防策
- 納期に余裕を持ったスケジュールを設計(最低でも+5営業日を見込む)
- 納期リスクを契約書で明確化(不可抗力条項など)
- スケジュール管理ツール/航路追跡(トラッキング)サービスの活用
- 航空便や別ルートの緊急代替輸送手段の確保
2. 貨物の「破損・紛失」
▷ よくある原因
- 輸送中の衝撃(不適切な梱包・積載)
- コンテナ内での転倒や液漏れ
- 荷扱い時の人為的ミス
- 積替え地点での誤配送や盗難
▷ 実際の事例
中国から輸入した精密機器が日本に到着した際に、クレートが破損し内部部品も壊れていた。保険請求の手続きを行うも、写真や現地確認報告が不十分で補償が一部に留まった。
▷ 対処法・予防策
- 商品特性に応じた最適な梱包・緩衝材を使用
- 梱包仕様書(Packing Specification)を事前に共有
- 輸送保険(貨物海上保険)に必ず加入
- 到着時の貨物検品と写真記録の徹底
- 損害発生時は早期に保険会社・運送会社へクレーム書類提出
3. 通関トラブル(輸入・輸出時)
▷ よくある原因
- インボイス・パッキングリスト等の記載ミス
- HSコードの誤り、原産地証明書の不足
- 他法令(薬機法、食品衛生法など)への未対応
- 輸入者登録不備(例:非居住者でACP未登録)
▷ 実際の事例
越境ECでアメリカへ発送した化粧品が、FDAの規制に抵触。必要な書類がなく、現地で保留・廃棄処分となった。
▷ 対処法・予防策
- 書類の事前チェックリスト(英語・日本語)を整備
- 通関業者(通関士)との密な連携
- 通関時に求められる特定商品の輸入規制を事前に確認(薬品・食品・動植物など)
- 必要に応じて専門家(貿易コンサルタント、行政書士)に相談
✅ その他のトラブルとその対応
トラブル | 主な原因 | 備え方 |
---|---|---|
書類の紛失・差し戻し | 輸送途中での紛失・電子送信失敗 | クラウド管理と複数控えの用意 |
保険未加入による損害全額負担 | 初心者によくある失念 | 保険加入は原則必須(輸出入契約書に明記) |
現地配達不可 | 買主不在・住所ミス・受取拒否 | 連絡体制と正確な送付先確認 |
✅ 事前にできる3つの備え(実務向けチェックリスト)
- 書類確認のダブルチェック体制を構築
- 社内でもう1人の目を通す仕組みをつくる
- 通関業者・フォワーダーとの契約範囲を明確化
- DDPやDAPなどインコタームズの理解と契約書反映
- 保険加入と事故時の初動フローを社内でマニュアル化
- クレーム時のテンプレート(メール文、証拠写真)も用意
✅ まとめ:トラブルをゼロにすることは不可能、だが「備えること」はできる
国際輸送のトラブルは、完全に防ぐことはできません。
しかし、「発生したときにどう動くか」「損害をどれだけ小さく抑えられるか」は、日頃の準備と情報共有にかかっています。
初心者の方はまず「起こり得ること」を知ることから、
実務担当者は「事後対応のテンプレート」として、この内容を活用してみてください。