ATAカルネとは?──通関を簡略化する「国際的なパスポート」

**ATAカルネ(ATA Carnet)**とは、展示会出展品や撮影機材など、
一時的に海外へ持ち出す物品を簡単に通関できる国際制度です。

これを使えば、関税や消費税を支払わずに物品を持ち込み・再持ち帰りできます。
世界共通のフォーマットを使うため、国ごとの煩雑な書類作成が不要です。

💡 ポイント:ATAカルネは「Temporary Admission(仮輸入)」の略。
展示会、見本市、イベント出展などで大活躍する通関の“パスポート”です。

💡 ポイントATAカルネを使った輸送をするなら海外物流サービス(ATAカルネ輸送)


ATAカルネの仕組みと国際的な背景

ATAカルネ制度は、**国際商業会議所(ICC)世界税関機構(WCO)**が定める国際協定に基づいて運用されています。
加盟国間で共通ルールが適用され、世界約80カ国以上が制度に参加しています。

この制度により、輸出・輸入・再輸出のすべてを「1冊のカルネ」でカバーでき、
各国税関でのスタンプにより手続きが完了します。


どんなときに使える?利用できるケース・使えないケース

✅ 使用できる主なケース

  • 海外展示会・見本市への出展品
  • テレビ・映画・CM撮影機材
  • 海外イベント・コンサート用機材
  • スポーツ大会用具
  • 海外工事・技術サポート用の工具・試作品

❌ 使用できないケース

  • 現地で販売・譲渡する物品
  • 消耗品や食品サンプルなど、使用後に残らないもの
  • 修理・加工を目的とした物品

⚠️ 注意:ATAカルネは「再輸入を前提とした貨物」に限られます。
販売目的で残すと、関税請求の対象になります。


利用のメリットと注意点

メリット内容
通関手続きの簡素化各国共通の書式で、税関処理が迅速。
関税・税金の免除一時輸入扱いのため、原則関税・消費税不要。
コスト削減複数国を巡る場合でも1冊のカルネで済む。
信頼性国際的な制度のため、税関でも認知度が高い。

注意点

  • 有効期限は1年間:延長不可のため、計画的に運用。
  • 紛失時の再発行は不可:取扱いは厳重に。
  • 未再輸出扱いのリスク:一部を残すと税金請求が発生。

申請方法と発行までの流れ

ATAカルネは、**日本商工会議所(JCCI)**および各地域商工会議所で発行されます。

🔸 申請手順

  1. 申請書の入手
    日本商工会議所または最寄りの商工会議所から申請書を入手。
  2. 必要書類の準備
    • 物品リスト
    • 使用目的・期間・訪問国
    • 会社情報・代表者印
  3. 保証金または保証保険の納付
    物品価格の30%前後を保証金として預託するか、指定保険会社の保証保険を利用。
  4. 審査・発行
    通常5〜7営業日で発行完了。

📦 費用目安:申請料+保証料で 数万円〜十数万円程度
📅 有効期間:発行日から1年間


実際の利用手順(輸出から再輸入まで)

1️⃣ 日本での輸出通関
 出発時に税関でカルネを提示。輸出スタンプを取得。

2️⃣ 現地での輸入通関
 到着国の税関で提出。輸入許可スタンプを受け、展示・使用開始。

3️⃣ 展示・利用期間中
 販売は禁止。展示・撮影・使用のみ可。

4️⃣ 再輸出・帰国通関
 帰国時に再輸出および再輸入スタンプを受ける。

💡 ポイント:すべての国でスタンプを受けることが非常に重要。
スタンプが欠けると「未再輸出扱い」になる恐れがあります。


トラブル事例と防止策

トラブル原因対応策
通関拒否書類不備事前に税関印欄・物品リストを確認
有効期限切れスケジュール超過余裕を持った計画と帰国時の確認
紛失・破損管理不十分コピー保存とデジタル保管
部分残留現地で一部残った罰金・関税請求を受ける前に報告

通常通関との違い

比較項目ATAカルネ通常通関
関税・税金原則免除必要
対象貨物一時輸出入品商業貨物全般
手続きの手間少ない(1冊で完結)多い
書類形式国際共通フォーマット各国別
有効期間1年以内制限なし

よくある質問(FAQ)

Q1. ATAカルネの申請は誰でもできる?
→ 企業・団体・個人事業主いずれも可能。展示会出展者や報道機関が主な利用者です。

Q2. 使用できる国はどこ?
→ 世界80か国以上(アメリカ・カナダ・EU・中国・韓国・シンガポールなど)。
※非加盟国では使用できません。

Q3. 期限切れ後はどうなる?
→ 延長不可。未再輸出扱いになり、関税が請求される可能性があります。


まとめ|ATAカルネで国際輸送をスムーズに

ATAカルネは、国際物流・展示会・撮影などの現場で大きな力を発揮する「通関のパスポート」です。
一度申請しておけば、複数国間の輸送をスムーズに進められ、コスト削減にもつながります。


✅ まとめポイント


🏁 最後に:こんな企業におすすめ

  • 海外展示会・見本市に頻繁に出展する企業
  • 海外で撮影・イベントを行う制作会社
  • 一時的に機材を国外で使うメーカー・研究機関