東南アジア市場の中でも、医薬品需要が急速に伸びているベトナム。高齢化や都市部の医療インフラ整備により、日本をはじめとした海外メーカーの参入が活発化しています。

しかし、ベトナムで医薬品を輸入・販売するには、GMP要件、製品登録、現地代理店との連携、規制当局との調整など、多くの手続きと制度理解が必要です。

この記事では、2025年時点の制度に基づいた最新の医薬品輸入ガイドとして、登録要件・手続きの流れ・当局の規制方針をわかりやすく解説します。


✅ ベトナムにおける医薬品の輸入制度の全体像

管轄機関:

  • 保健省(MOH)
  • 医薬品管理局(DAV: Drug Administration of Vietnam)

必須要件の柱:

  1. 医薬品の登録(MA: Marketing Authorization)
  2. 製造業者のGMP認証(GMP WHO基準)
  3. 輸入業者のライセンス取得
  4. 流通チャネル管理(全国販売・病院販売・特定用途)

📦 医薬品の登録要件(MA申請)

ベトナムで医薬品を販売するには、DAVからMA(販売許可)を取得する必要があります

MA = Marketing Authorization(販売許可・製品登録)の略です。

登録対象:

  • 医療用医薬品(ETC)
  • 一般用医薬品(OTC)
  • 生物製剤、ワクチン、医療用漢方薬など

主な申請書類:

書類名内容
製品情報文書(Product Dossier)CTDフォーマットまたは現地指定形式
GMP証明書(製造業者用)PIC/SまたはWHO準拠であることが望ましい
製品品質証明書(COA)複数ロットのデータ推奨
安定性試験報告Zone IVb(熱帯)の条件を含む
使用説明書(モノグラフ)ベトナム語版の提出が必要
ラベリング・包装表示見本英語・ベトナム語の併記推奨
医薬品製品証明書(CPP)原産国当局が発行した販売許可証明書

🏭 GMP要件(製造拠点に対する基準)

ベトナムでは、輸入医薬品の製造元がGMP認証を取得していることが原則条件です。

認められるGMPの種類:

  • WHO-GMP(必須)
  • PIC/S GMP(強く推奨)
  • EU-GMP / US FDA cGMP(有利に働くが、単独では不可)

GMP認証の取り扱い:

  • 外国製造所の実地査察が行われるケースあり
  • 過去にDAVによる査察実績がある場合、手続きがスムーズ
  • 非PIC/S国のGMPは審査に時間を要することが多い

🛃 医薬品輸入の基本要件

ベトナム国内で輸入業務ができるのは:

  • 医薬品輸入ライセンス(Import License)を保有する法人のみ

輸出者(日本側)単独ではベトナム市場で販売できず、以下のいずれかの形が必要です:

  1. ライセンス保有の現地ディストリビューターと連携
  2. JV・現地法人を設立してライセンス取得
  3. 第三者登録(MAホルダー)による間接輸出

🔄 医薬品登録の手続きフロー(一般医薬品)

  1. 製品情報準備(CTDまたはVN形式)
  2. GMP証明取得・翻訳・公証
  3. DAVに登録申請(オンライン+書類提出)
  4. 専門審査・質疑応答対応
  5. 登録承認・MA番号発行(有効期間5年)
  6. 輸入申請・販売開始

📈 2025年時点の最新動向・留意点

1. 登録審査の長期化傾向

  • 一般品で12〜18ヶ月、生物製剤やワクチンで2年以上かかることも

2. 優先審査制度の導入

  • PIC/S GMP取得済、または日本・米国・EUで承認済製品は優先審査対象に

3. 現地製品優遇政策の強化

  • 国産ジェネリック品に優先調達枠があり、入札参加要件としてMA取得年数・現地生産有無が問われる

4. オンライン申請・デジタル化の進展

  • DAVは申請プラットフォームを整備中(オンラインCTD受付など)

✅ 輸出企業へのアドバイス

チェック項目内容
GMP証明PIC/SまたはWHO-GMP取得済みか?
パートナー選定登録・販売の実績があるベトナム企業か?
ラベリング設計ベトナム語+現地規制準拠になっているか?
競合分析同効薬の販売実績・価格帯・規制分類を把握しているか?
マーケティング戦略病院向けか、民間流通向けかで戦略が異なる

📝 まとめ

ベトナムは、アジア有数の成長市場でありながら、医薬品輸入には高度な規制対応とパートナー戦略が求められる市場です。

特に:

  • GMP認証の水準
  • MA取得の準備期間
  • 販売チャネル戦略

を踏まえた中長期計画が成功の鍵になります。