制度の概要と申請手順をわかりやすく解説
はじめに|台湾への化粧品輸出には「PIF」が必要です
日本の化粧品は、その品質や安全性、信頼性から世界中で高い評価を受けており、台湾市場も例外ではありません。特にスキンケアやメイクアップ製品は、台湾の若年層・美容意識の高い消費者の間で人気が高まっています。
しかし、台湾に化粧品を輸出する際は、台湾当局が定めた規制に基づいた「PIF(Product Information File/製品情報ファイル)」の作成・備え付けが義務となります。
この記事では、台湾のPIF制度の概要と、その申請・準備方法について、初めて輸出を検討する企業にもわかりやすく解説します。
PIF(製品情報ファイル)とは?
定義と背景
PIFとは「Product Information File」の略で、輸入化粧品に関する安全性・品質・責任者情報などをまとめた文書ファイルのことです。
台湾では2021年7月に改正された「化粧品衛生安全管理法」により、欧州連合(EU)で導入されている制度に類似した形で、輸入化粧品ごとにPIFの備え付けが義務化されました。
台湾のPIF制度の位置づけ
- 目的:製品の安全性・トレーサビリティの確保
- 管轄官庁:台湾衛生福利部食品薬物管理署(TFDA)
- 対象製品:台湾国内で販売・流通させるすべての化粧品(一般・特殊を問わず)
誰がPIFを用意するのか?
- 台湾で販売される化粧品のPIFは、原則として台湾国内の「責任業者(Responsible Person)」が作成・管理します。
- 輸出者である日本のメーカーは、製造情報・成分表・試験成績書などの技術情報を提供する役割があります。
- 台湾に責任者を持たない場合は、輸入代理店や化粧品輸入支援会社を通じて責任者を立てる必要があります。
PIFに必要な書類・情報一覧(台湾版)
以下はTFDAが定めるPIFの主要構成要素です(原則、中国語または英語で作成):
区分 | 内容 |
---|---|
製品説明 | 製品の外観、目的、対象、使用方法など |
成分情報 | 全成分表示、各成分の目的と含有量、CAS番号など |
製造情報 | 製造施設名・所在地・製造工程概要 |
安全性評価 | 原料の毒性情報、皮膚刺激性・アレルギー評価 |
試験結果 | 微生物試験、安定性試験、金属含有検査など |
ラベル情報 | 表示ラベル(中国語)・表示見本(箱・容器) |
商品写真 | 外装・容器・パッケージを含む高解像度写真 |
輸出者情報 | 輸出企業の社名・住所・連絡先 |
台湾の責任者情報 | 台湾法人の情報、担当者、連絡先、統一番号等 |
PIF申請の手順と流れ(実務編)
ステップ①:台湾の責任者を選定
- 台湾側の輸入代理店や商社が対応することが一般的です。
- 輸出元(日本企業)は事前に連携し、PIF作成のための技術資料・成分表などを提供します。
ステップ②:製品情報の収集・整備
- 成分情報の和英・和中翻訳
- 製造フロー図やMSDS(安全データシート)の準備
- 試験データ(微生物、安定性、アレルゲンなど)
ステップ③:PIFの作成・電子保管
- 台湾責任者がPIFを作成し、TFDAによるチェックに備えます。
- PIFそのものは原則、当局へ提出しませんがランダムに抜き打ち検査をされる場合があります(特に特殊用途化粧品の場合)。
ステップ④:化粧品成分管理システム(TFDA COSDS)への登録(必要に応じて)
- 特殊用途化粧品(美白、育毛、防臭など)は、**別途オンライン申請(許可制)**が必要となります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 一般化粧品でもPIFは必要ですか?
→ はい、必要です。 特殊用途に限らず、すべての市販化粧品はPIF備え付け義務があります。
Q2. 日本語のままではダメですか?
→ 不可です。 TFDAが要求する言語は中国語または英語です。翻訳は正確性が求められ、専門用語の誤訳による差し戻しもあります。
Q3. 一度作成すれば使い回せますか?
→ 同一製品であれば、使い回し可能です。ただし、処方・ラベル・成分などが変更された場合は、再作成・更新が必要です。
PIF申請にかかる期間・費用の目安
項目 | 目安 |
---|---|
準備期間 | 2週間〜1ヶ月(書類・翻訳の有無による) |
登録費用 | 無料(PIF提出義務なし) |
作成委託費用(外部委託時) | 約3万〜10万円/製品(翻訳・試験・編集費込) |
登録業者(台湾側)との契約 | 別途年間管理費が発生することもあり |
違反時のリスクと罰則
- PIF未整備が発覚した場合:
- 販売停止
- 製品回収命令
- 罰金(NTD30,000〜500,000/約15〜250万円)
- 特殊用途製品で未登録の場合は、さらに厳重な行政処分の可能性あり
台湾における**特殊用途化粧品(Special Purpose Cosmetics)**とは、一定の機能性・薬理的効果が期待される化粧品であり、一般化粧品よりも厳格な管理・申請が必要とされる製品群を指します。
✅ 特殊用途化粧品に該当する主な製品例(台湾TFDA基準)
台湾の「化粧品衛生安全管理法」において、以下のような製品が特殊用途化粧品として分類されます:
用途・効果 | 該当する製品例 |
---|---|
美白(肌の色を明るくする) | 美白クリーム、トーンアップエッセンスなど |
育毛・脱毛抑制 | 育毛ローション、頭皮トニック |
抗ふけ・頭皮ケア | 抗ふけシャンプー、スカルプトリートメント |
デオドラント(防臭) | ワキ用デオドラント、フットスプレー |
日焼け止め(UV防御機能) | SPF・PA表示のサンスクリーン製品 |
にきびケア | アクネケアローション、抗炎症ジェル |
殺菌・消毒(化粧品用途での表示のみ) | 一部のハンドジェル、洗顔料(成分による) |
虫除け | 虫よけスプレー、虫除けローション |
🧾 特殊用途化粧品に課される追加要件
- オンラインでの事前申請(TFDA COSDS)
- 製品登録時に専用システムでの申告が必要
- 内容審査後に承認番号が付与されます(一般化粧品では不要)
- PIFへの記載強化
- 有効成分の安全性・有効性に関するデータ提出
- 試験データ(SPF値、育毛試験、安全性評価)などが求められます
- ラベル表示要件の強化
- 使用目的や効果表示は台湾TFDAが定めた文言に準拠する必要があります(例:「美白」→「肌膚亮白」など)
⚠️ 特殊用途化粧品の注意点
- 成分そのものは一般化粧品でも使用可能でも、表示文言や販売目的によって特殊用途扱いになる場合があるため注意が必要です。
- たとえば、「日焼け止め効果あり」「毛髪の成長促進」などの機能性訴求をラベルに記載する場合は、事前登録が必須になります。
まとめ|台湾向け化粧品輸出に「PIF対応」は不可欠
台湾は親日かつ日本製化粧品への信頼が非常に高い市場ですが、その一方でEUに準じた厳格な安全管理制度を導入しています。
PIFの整備は以下の理由から「必須対応」です。
- 責任業者と輸出者の連携が必要
- 成分情報や安全性データの翻訳・整理が必要
- 特殊用途ではオンライン申請と当局審査も必要台湾における
特殊用途化粧品の場合は下記にも注意。
- 機能性をうたう化粧品(美白・育毛・UV・防臭など)
- 通常のPIFに加えて、オンライン事前申請と追加書類提出が必要
- 違反時には販売停止や罰金のリスクも
「なんとなく輸出」ではなく、制度を正しく理解して対応することが、長期的なブランド価値にも直結します。