国際物流の中でも最も注意が必要なのが 危険品(Dangerous Goods / DG)輸送 です。
危険物は、発火・腐食・有毒・爆発などのリスクがあるため、航空輸送・海上輸送ともに厳しい国際ルールが定められています。
しかし、正しく分類し、必要書類を整え、適切な梱包・ラベルを施すことで、安全に世界中に輸送することが可能です。
この記事では、
初心者にもわかりやすく、実務経験者にも役立つ “完全版ガイド” として、
危険品輸送の基本から、航空・海上で必要なルール、準備、注意点まで徹底解説します。
危険品とは?国際ルールで定められた9つのクラス
危険品は国連(UN)規則に基づく9つの分類に分けられます。
すべての危険品輸送は、このUN分類を基準にルールが決まります。
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■ UN分類(Dangerous Goods:DG)9クラス
| クラス | 名称 | 代表例 |
|---|---|---|
| 1 | 爆発物 | 花火、火薬、エアバッグ |
| 2 | ガス | 可燃性ガス、冷媒ガス、スプレー缶 |
| 3 | 引火性液体 | 香水、アルコール、塗料、溶剤 |
| 4 | 可燃性固体 | マッチ、硫黄、金属粉 |
| 5 | 酸化性物質 & 有機過酸化物 | 乾燥剤、漂白剤 |
| 6 | 有毒物質 | 農薬、医薬化学品 |
| 7 | 放射性物質 | 放射線計測器など |
| 8 | 腐食性物質 | バッテリー液、酸・アルカリ |
| 9 | 雑品(Miscellaneous) | リチウム電池、磁性物質、ドローンバッテリー |
特に注意すべきは リチウムイオン電池(Class 9) で、
小型電子機器でも危険品扱いになる場合があります。
危険品輸送に必要な「3つの国際ルール」
危険品輸送では、以下の国際ルールが必ず適用されます。
■ ① IATA DGR(航空輸送規則)
- 国際航空運送協会(IATA)が発行
- 航空輸送する全ての危険品に必須
- リチウム電池、香水、化学品などの詳細規制を含む
→ 航空輸送は世界で最も規制が厳しい
■ ② ICAO 技術規則(国連航空技術指針)
IATA DGRのベースになっている正式国際ルール。
■ ③ IMDGコード(海上輸送)
- 国際海事機関(IMO)が定める海上輸送用ルール
- コンテナ船・LCL・RORO船などすべての海上輸送に適用
→ 数量・包装の自由度は航空より高いが、危険度に応じて厳格な積付制限がある
危険品輸送に必要な書類一覧
危険品は、通常の輸出入より 追加書類 が多くなります。
■ 必須書類チェックリスト
□ ① SDS(安全データシート)
- 旧名称 MSDS
- 製品の危険性・成分・UN番号が記載
- 最新版(16項目)が必要
→ 危険品輸送の出発点であり、最重要書類
□ ② 危険品申告書(Shipper’s Declaration for Dangerous Goods)
航空輸送:必須
海上輸送:DGD(Dangerous Goods Declaration)が必要
→ 輸送会社が最も重視する書類
□ ③ 包装証明 / 試験証明
- リチウム電池:UN38.3 試験レポート
- 危険品容器:UN規格包装の証明書
□ ④ インボイス・パッキングリスト(通関用)
通常輸送と同じく必要。
航空輸送での危険品ルール(IATA基準)
航空輸送は、危険品ルールがもっとも厳格です。
■ 航空危険品で特に重要なポイント
① 内容物によっては「航空輸送禁止」になる
例:
- 大容量リチウム電池
- 一部の腐食性物質
- 過酸化物
→ 代替として海上輸送が必要なケースも多い。
② 梱包基準は IATA Packing Instruction(PI)に従う
例:
- リチウムイオン電池(PI965〜970)
- 引火性液体(PI355 など)
梱包ミスは即アウト、輸送拒否の原因になります。
③ 危険品ラベル(Hazard Label)の貼付が必須
例:
- リチウム電池マーク
- クラスラベル(赤、黄、白など)
- ハンドリングラベル
ラベル不備は航空会社の搭載拒否につながる大問題。
④ 航空会社(Carrier)独自ルールもある
例:FedExはリチウム電池規制が特に厳しい
→ フォワーダーが最新情報を把握しているかが重要。
海上輸送での危険品ルール(IMDGコード)
海上輸送は数量柔軟性が高い一方、別の制限が存在します。
■ 海上危険品のポイント
① コンテナ内の積付(Segregation)が重要
例:
- 可燃性物質と酸化剤を隣接不可
- 食品と化学品の分離など
→ IMDGコードの積付表を遵守しないと受け付け不可。
② 船会社によって積み扱い可否が異なる
特にトランシップ(途中の寄港地)で規制が違う場合がある。
③ UN容器(UN仕様ドラム・缶)の使用が必須
航空より自由度はあるが、危険品適合容器の証明が必要。
④ 危険品申告(DGD)をコンテナブッキング前に提出
海上は、申告のタイミングが遅れると船に積めなくなる。
危険品輸送の事前準備フロー(初心者向け)
初心者が最もつまずくのが「何から始めるか?」
以下の流れで進めるのが最も安全です。
■ ステップ1. SDSでUN番号・クラス分類を確認
例:
- UN3480(リチウムイオン電池)
- UN1993(引火性液体)
■ ステップ2. 航空 or 海上どちらが適切か判断
- 航空不可 → 自動的に海上
- 緊急輸送 → 航空対応可能な梱包に調整
■ ステップ3. UN適合梱包材を準備
メーカー・専門包装業者の使用が安全。
■ ステップ4. ラベル・マーキング作成
- クラスラベル
- UN番号
- ハンドリングラベル
■ ステップ5. 危険品申告書を作成
フォワーダーや専門業者へ依頼可能。
■ ステップ6. 航空会社・船会社へ事前申請
搭載可否の事前承認が必要なケース多い。
危険品輸送でよくあるトラブル
危険品輸送では「初歩的なミス」で貨物が止まることが多いです。
❌ SDSが古い・情報不足
→ 最新版を必ず入手(3〜5年以内推奨)
❌ 梱包がUN規格に適合していない
→ 正しい容器・緩衝材を使用すること
❌ ラベル不備
→ 貼り忘れ・サイズ間違いが頻発
❌ 申告書の誤記載
→ 航空会社が即拒否。ブッキングが無駄に。
❌ リチウム電池ルールの誤解
→ 一般商品のつもりが危険品扱いになることが多い
危険品輸送の手配はプロを活用するのが最も安全
危険品輸送は、「自分でやる」よりも
危険品取扱資格者(IATA DGR資格・IMDG資格)を持つ業者に依頼
するのが最も安全です。
近年は 危険品輸送サポート を行う
株式会社ノーパットの海外物流サービスなどの管理サービスを併用する企業も増えています。
まとめ|危険品輸送は正しい知識と準備で安全にできる
危険品輸送は、
- UN分類
- SDS
- 航空・海上規則
- 梱包基準
- 申告書
- ラベル表示
など、多くのステップをクリアする必要があります。
しかし、ルールを理解し、必要な書類・梱包・申告を適切に行えば、
安全に世界中へ輸送することが可能です。
