インコタームズ2020における「CIF=ICC(C)」と「CIP=ICC(A)」の違いについて、わかりやすく解説します。
目次
✅ CIFとCIPには保険の手配義務がある
- CIF(Cost, Insurance and Freight)
⇒ 海上輸送専用。売り手が運賃と保険を負担 - CIP(Carriage and Insurance Paid to)
⇒ 複合輸送も可。売り手が運賃と保険を負担
どちらも共通して、売り手が「最低限の保険」をかけることが義務付けられています。
✅ ICC保険条件とは?
国際的に使われる保険条件には「ICC(Institute Cargo Clauses)」という規格があり、以下の3つに分かれます:
種類 | 補償内容 | カバー範囲 |
---|---|---|
ICC(A) | オールリスク(ほぼすべて補償) | 最も広い |
ICC(B) | ICC(A)より限定的 | 中程度 |
ICC(C) | 火災・海難・沈没など基本的な事故のみ | 最も狭い |
✅ CIF=ICC(C)、CIP=ICC(A) の意味と違い
項目 | CIF | CIP |
---|---|---|
保険条件 | ICC(C)(最低限) | ICC(A)(最大限) |
補償範囲 | 火災、沈没、座礁など限定的 | ほぼすべての損害に対応 |
輸送対象 | 海上輸送専用 | 全輸送モード(複合輸送可) |
実務での注意 | 補償範囲が狭いので、買い手が追加保険を検討すべき | 売り手側がより広い保険を手配する義務あり |
✅ CIFとCIPの保険条件の比較表(ICC基準)
項目 | CIF | CIP |
---|---|---|
インコタームズ | Cost, Insurance and Freight | Carriage and Insurance Paid to |
対応輸送モード | 海上輸送専用 | 全輸送モード(複合一貫輸送含む) |
保険の種類(ICC条件) | ICC(C)(最低限の補償) | ICC(A)(オールリスク=最大補償) |
補償対象 | 火災・座礁・沈没・海難など基本的リスク | 盗難・水濡れ・破損・事故等ほぼすべてのリスク |
売り手の保険手配義務 | あり(最低限でOK) | あり(ICC(A)相当でなければならない) |
買い手の補償上の注意点 | 保険が不十分な場合、自身で追加手配が必要 | 売り手が広範囲の保険を手配する前提 |
インコタームズ2020の変更点 | 従来通り ICC(C) が基準 | 2020から ICC(A) が明確に規定されるようになった |
✅ 表の解説:
- ICC(C):最小限の海難リスク(火災、沈没、座礁など)を補償。CIFの標準。
- ICC(A):ほぼすべての損害(破損、盗難、水濡れなど)を補償。CIPの標準。
- 売り手の責任:CIFでは最低限でよく、CIPでは最大補償を手配する義務がある。
- 買い手の注意点:CIFを選ぶ場合は、補償範囲を必ず確認し、必要に応じて追加保険を。
✅ 実務上のポイント
- 買い手が「CIF」で十分な補償を望む場合
→ 売り手にICC(A)での追加保険を依頼する or 自分でかけ直す - CIPを使う契約では、売り手はICC(A)相当の保険を必ず手配する義務あり
→ これはインコタームズ2020の新ルールです(2010では明記されていませんでした) - 契約書に保険内容(ICCの種類)を明記しておくと安心
→ 例:「Insurance shall cover risks under ICC(A), including war and strike clauses.」
✅ まとめ
- CIF:最低限の保険(ICC(C))でOK → 売り手の負担が軽い
- CIP:最大限の保険(ICC(A))が必要 → 売り手の負担が大きい
契約時は、誰がどこまで補償すべきかを明確にしておくことが、国際取引のリスク管理において重要です。