輸出入業務をしていると必ず目にする「HSコード」。
税関書類やインボイスに記載されるこの番号、実は関税率・輸出入規制・通関スムーズ化すべてに影響する、極めて重要なものです。

この記事では、HSコードとは何か、どうやって分類・確認するのか、実務での使い方と注意点までを、図解・事例を交えてわかりやすく解説します。


✅ HSコードとは?

HSコード(Harmonized System Code)とは、世界共通で使用される「商品の分類番号」のことです。

国際貿易において、すべての貨物はこの番号によって分類・管理されており、税関での申告、関税評価、統計処理、輸出入規制の適用などに使われます。


✅ HSコードの構造(6桁が国際共通)

HSコードは基本的に6桁構成で、各国がそれに上乗せする形で運用しています。

桁数内容例(歯ブラシ:960321000)
前2桁類(Heading)96(雑品類)
次2桁項(Subheading)03(ブラシ類)
次2桁号(Detailed heading)21(歯ブラシ)
7桁目以降各国が任意に設定日本では最大9桁で運用

ポイント:世界共通なのは前6桁(例:960321)。7桁目以降は国ごとに異なります(日本は9桁、米国は10桁など)。


✅ HSコードが重要な理由

目的HSコードの役割
関税計算商品ごとに関税率が異なるため、正確な分類が必要
輸出入許可・規制対象商品に該当すれば規制・届出が必要(例:食品、危険物)
通関処理税関申告書類(インボイス・P/L)への記載必須
FTA適用原産地規則もHSコード単位で決まる

注意: 間違ったコードを記載すると、誤課税・通関遅延・規制違反などのリスクがあります。


✅ HSコードの調べ方【日本編】

① 税関「関税率表」を使う

② 通関業者に相談

  • 自社で判断できないときは、通関会社や通関業者(通関士)に相談するのが安全

③ 商品の仕様書・カタログを添えて税関へ事前照会

  • 「事前教示制度」という制度を使えば、税関が公式に分類コードを通知してくれます
  • 特に曖昧な商品(複合製品や部品)は必須

④ 類似商品を参考にする

  • 既に輸出入実績のある類似商品のコードを参考にするのも一つの手

✅ 実務での確認手順(チェックリスト)

ステップ内容
1. 商品の名称と用途を明確にする「プラスチック製の台所用ブラシ」「ノートパソコン」など
2. 製品仕様・材質・構造を確認何でできているか、どんな機能か
3. 財務省の関税率表でカテゴリを検索類・項・号をたどって6桁を特定
4. 日本国内では9桁まで確認最終的には9桁で申告される
5. 規制の有無・関税率をチェック税率・C/Oの要否・認可の有無など
6. 疑わしければ事前教示を申請書面で税関の回答がもらえる(無料)

✅ HSコードに関するよくある誤解と注意点

❌ インボイスに「商品名」だけ書けばOK?

NGです。税関は商品名ではなくコードで判断します。正確なHSコードの記載が必須です。

❌ 過去の輸出入で使ったコードなら常に正しい?

→ 商品が変わったり、関税表の改正があると変わることがあります。

❌ どの国でも同じコードが使える?

→ 前6桁は共通ですが、7桁以降は国によって異なる。FTA・EPAの申請時は相手国のコードも要確認


✅ HSコードとFTA(自由貿易協定)の関係

FTAで関税免除を受けるためには、「原産地規則」を満たす必要がありますが、これはHSコード単位で規定されています。

たとえば:

  • HSコード8471.30(ノートPC)
     → 加工国が日本で、部品の原産地が非協定国なら、関税免除を受けられないことも

要確認: 輸出先の協定(EPA)に基づいて、HSコードと原産性をセットでチェックする必要があります。


✅ まとめ:HSコードの理解と正確な運用が貿易成功のカギ

項目ポイント
HSコードとは?世界共通の貿易分類コード(基本6桁)
使い道関税評価、通関、規制判断、FTA申請
確認方法税関の関税率表、通関士、事前教示制度
実務注意点不正確な分類は課税・通関トラブルの原因に

📝 実務アドバイス

  • 「これは雑貨です」「部品です」など曖昧内容では通関できません。
  • 商品の機能・構造・材質をもとに正確な分類を行いましょう。
  • 事前教示は無料で確実。特に初めて輸出入する商品ではぜひ活用を。