はじめに|なぜドルフィンセーフが重要なのか?
アメリカ合衆国は、水産物の輸入に対して極めて厳格な環境保護基準を設けています。
その中でも代表的なのが、「ドルフィンセーフ(Dolphin Safe)」認証制度です。
この制度は、マグロ・カツオ製品などの輸出にあたって欠かせない認証制度であり、アメリカの小売・流通チェーンや消費者からの要求も高まっています。
「ラベル表示がないと通関できないの?」「どんな製品が対象?」「書類は何が必要?」
→ この記事では、こうした疑問を制度の背景から実務手順まで徹底的に解説します。
NOAA: アメリカ合衆国海洋漁業局の船長用イルカ無害研修コースと「船長による保証陳述書」
下記はアメリカ合衆国海洋漁業局のマグロ検索証明プログラムの船長用イルカ無害研修コ‐スと船長による保証陳述書の新書式のインターネットリンクです。これらは、 2016 年 5 月 21 日以降に始まる航行に適用されます。これらの新しい要件は東部熱帯太平洋での400 ショートトン(362.8MT)以上の運搬能力を持つ大型巾着網船の航行には適用されません。
Below are Internet links to the National Marine Fisheries Service Tuna Tracking and Verification Program’s dolphin-safe captain’s training course and to the new Captain’s statement template. These apply to fishing trips that begin on or after May 21, 2016. These new requirements do not apply to large purse seine vessels fishing in the eastern tropical Pacific Ocean which have a carrying capacity of more than 400 short tons (362.8 mt).
- 船長用のイルカ無害研修コ―スはこちらをクリックしてください。 (PDF, 13 pages) (Dolphin-Safe Captain’s Training Course)
- 船長による陳述書(新様式) (PDF, 1 page) (Captain’s Statement Template)
✅ ドルフィンセーフ認証とは?制度の概要
🔹 ドルフィンセーフ認証とは
「漁獲の際にイルカを傷つけていないマグロ製品であることを保証する制度」
正式名称:Dolphin Safe Tuna Labeling Program
🔹 管轄機関
- 米国商務省国家海洋漁業局(NOAA:National Oceanic and Atmospheric Administration)
- 内部組織:NMFS(National Marine Fisheries Service)
🔹 制度の目的
- マグロ漁業によるイルカの混獲・致死を防止する
- 漁業の持続可能性を確保する
- 消費者に「環境配慮型製品」を示す信頼性のあるラベルを提供
✅ 対象となる製品(輸出品)
ドルフィンセーフの適用対象は、主に以下のマグロ・カツオ関連製品です。
| 対象製品 | HSコード例(参考) | 備考 |
|---|---|---|
| 缶詰マグロ | 1604.14 | ラベル表示が強く求められる |
| 冷凍マグロ(ロイン・フィレ) | 0303.43 | 加工前後どちらでも対象になる可能性あり |
| 鰹(カツオ)製品 | 1604.15 / 0303.44 | 米国ではBonito類も「Tuna類」として扱われる場合がある |
| レトルト・パウチ食品 | 1604.20 | 使用原料にマグロを含む場合対象 |
✅ 使用されているマグロの漁獲方法や加工工程が問われます。
✅ ドルフィンセーフの適用条件(認証要件)
ドルフィンセーフ認証ラベルを付けるには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
🐬 条件①:イルカの混獲がないこと
- 漁獲時にイルカを狙った漁法(Purse Seine with Dolphin sets)はNG
- イルカの死亡・負傷・追跡が確認されたロットは対象外
📜 条件②:漁獲証明書(Captain’s Statement)の提出
- すべての漁獲に対し、「イルカに危害を与えていない」旨の署名付き証明書が必要
- 漁船の船長(Captain)または公的監督機関が発行
🏭 条件③:加工過程で混入・混同がないこと
- 加工段階で非ドルフィンセーフのマグロと混在していない証明
- HACCPやトレーサビリティシステムによる管理体制が求められる
✅ 認証取得の流れ(輸出者・加工業者向け)
以下は、ドルフィンセーフ認証の取得~表示までの実務フローです。
- 対象魚種の選定
→ マグロ、カツオを含む製品が対象 - 漁獲時点の証明書取得
→ Captain’s Statement を船長または公的機関から取得 - 加工工場でのロット管理体制の整備
→ 原材料の仕入~製品出荷までのトレーサビリティを記録 - ドルフィンセーフ表示を行う際は、NOAAに届出
→ ラベル付き商品をアメリカで販売する際には、事前登録推奨 - 輸出書類に証明書を添付
→ インボイス、原産地証明書、パッキングリストと一緒に提出
✅ ラベル表示例と規制
ドルフィンセーフ認証マークは、米国政府公式マークではありませんが、複数の非政府機関(NGO)が定めたガイドラインに基づいて発行されます。
📌 表示例(例):
- “Dolphin Safe”
- “This product was produced without harming dolphins.”
- “NOAA-compliant, dolphin-safe tuna”
✅ 米国のFDA(食品医薬品局)やNOAAにより虚偽表示には法的制裁あり(最大で民事罰、製品輸入停止措置)
✅ 違反時のリスクと注意点
| リスク内容 | 対応機関 | 想定されるペナルティ |
|---|---|---|
| 虚偽表示(Dolphin Safeと記載) | NOAA, FDA | 米国への輸出差止、罰金、企業名公表 |
| 証明書の不備 | 税関、通関業者 | 通関遅延、再審査、拒否対応 |
| 加工工場の管理不備 | 販売先・バイヤー | リコール、信用喪失、契約打ち切り |
✅ 記録の保存義務(5年間)がNOAAより義務づけられています。
✅ よくある質問(FAQ)
Q. 一部だけマグロを使用した加工食品でも必要?
→ はい。使用比率にかかわらず、マグロやカツオが原材料に含まれる場合は対象になる可能性が高いです。
Q. 輸出者側でもラベルを発行できる?
→ 可能ですが、NOAAガイドラインに準拠した根拠資料が必要。Captain’s Statementや原産地証明などを整備しましょう。
Q. ドルフィンセーフ認証を取らなくても輸出はできる?
→ 理論上は可能ですが、米国の小売・量販店ではドルフィンセーフ製品でないと取り扱わない場合がほとんどです。
✅ 日本企業が準備すべきこと(チェックリスト)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 漁獲証明の取得体制は整っているか | Captain’s Statementを確保できる仕入先との取引 |
| 工場でのロット管理ができるか | 非ドルフィンセーフ原料との混在を避ける体制整備 |
| 書類の保管・提出体制 | 5年間の保管義務に対応可能か |
| ラベルガイドラインを理解しているか | NOAAの定める表示条件に準拠しているか |
✅ まとめ|ドルフィンセーフ対応は今や“輸出の必須要件”
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 認証の意義 | 持続可能な漁業と環境保護に対応する企業姿勢を示す |
| 対象製品 | マグロ・カツオを含むすべての食品(缶詰、冷凍、レトルト等) |
| 必要書類 | Captain’s Statement、ロット管理記録、インボイス添付書類 |
| 対応のメリット | 米国市場での信頼獲得、輸出許可の迅速化、ブランディング強化 |
📝 実務アドバイス(企業担当者向け)
- ドルフィンセーフ対応は、単なる環境対応ではなく“取引先要件”として対応必須です。
- 専用の「輸出管理ファイル」を作成し、証明書・ロット・加工日・原料仕入元を紐づけて管理しましょう。
- 可能であれば、Captain’s Statementを英語で一括取得+通関書類と一緒に管理することを推奨します。