知らないと輸入が止まる!?FDA規制の全体像と2025年アップデート対策
アメリカ食品輸入規制の基礎
アメリカの食品安全・輸入制度は、**FDA(米国食品医薬品局)**が中心となって管理しています。輸入食品は国内製品と同等レベルの安全性・衛生条件が求められ、以下の基本要件があります。
- 食品は安全で安全衛生的であること
- 英語での正確なラベル表示が必要
- 輸入前にFDAへ通知(Prior Notice)をすることが義務化
- 施設・輸入者はFDA登録等を行う必要がある
これらは全て Federal Food, Drug, and Cosmetic Act(米国連邦食品医薬品化粧品法) を根拠にしています。U.S. Food and Drug Administration
2. アメリカ食品輸入で企業が押さえるべき主要規制
✅ ① FDA食品施設登録(Food Facility Registration)
輸出製造元・輸入商社・サプライヤーは、FDAへ施設登録を行う必要があります。これによりFDAは海外の供給者を把握し、緊急対応時や検査時に追跡可能となります。
これは食品輸入の最初の必須ステップです。U.S. Food and Drug Administration
✅ ② Prior Notice(事前通知)
FDAは、輸入される食品について**Prior Notice(先行通知)**の提出を義務付けています。輸入貨物が米国に到着する前に通知をすることで、FDAと税関が検査対象を選定できるようになります。U.S. Food and Drug Administration
ポイント
- 通常輸送だけでなく、国際メール便経由の食品も対象になっています。
- 2025年9月の変更で、「配送会社名」「追跡番号」の提示も必須となり、追跡と追跡精度が向上します。U.S. Food and Drug Administration
✅ ③ FSVP(Foreign Supplier Verification Program)
FSVPは、輸入業者に対して海外サプライヤーの食品安全管理体制を検証し、それを保証するプログラムです。輸入業者は以下を確認・記録する必要があります。
- 供給者の安全性とリスク管理体制
- HACCP等に準じた生産プロセス
- アレルゲン表示管理などの体制
違反が見つかると指導・改善命令や輸入差止めにつながるケースもあります。U.S. Food and Drug Administration
✅ ④ ラベル表示規制
米国では食品のラベル表示が極めて細かく規制されており、以下のような項目が正確に表示されている必要があります:
- Statement of Identity(商品名)
- 原材料のリストとその順序
- アレルゲン情報
- 原産国・Importer 表示
- 健康・機能性の誤解を招く表現の禁止
ラベル違反は輸入差止めの最も多い原因となっているため、特に注意が必要です。Around The World
3. 2025年の重要な規制変更
2025年は、アメリカの食品輸入関連で以下のような重要な規制変更・運用見直しがありました。
🛑 ① 低額輸入審査免除の撤廃(2025年7月)
従来、$800 以下の低額輸入(de minimis)は審査免除されるケースがありましたが、2025年7月9日付でこの制度は 撤廃されました。
これにより、少量の商品やオンライン越境ECでの輸出でも、全てFDA規制の対象となります。
➡ 小口・少額輸入でも正確なPrior Notice・登録・ラベル対応が必須になり、手続きが簡素化されず、安全要件遵守が重要化された点が大きなポイントです。
📤 ② Prior Notice(事前通知)の強化(2025年9月)
2025年9月25日にFDAはPrior Notice制度の規制を改正し、以下の情報の提出を義務化しました:
- 配送会社名
- 追跡番号(Tracking Number)
これにより、FDAが郵便物や小包の食品も追跡検査できるようになり、未申告輸入を防ぐ仕組みが強化されました。U.S. Food and Drug Administration
🧪 ③ 特定食品の輸入認証(2025年10月〜)
2025年10月31日から、FDAは特定の水産物(例:エビ)や香辛料(スパイス)について、原産地や特定地域に基づく輸入認証を必要とするルールを導入しました。
これは特定リスクに対応した措置であり、輸入前の証明書類の提出や追加データの提供が求められます。U.S. Food and Drug Administration
📊 ④ トレーサビリティ規則の延期(Food Traceability Rule)
元々、特定食品に対してトレーサビリティ記録の保持が2026年1月から義務化される予定でしたが、2028年7月20日まで延期される方向が示されています。
これにより、輸出事業者には少し猶予が生まれていますが、将来的に対応計画を立てておくことが推奨されています。U.S. Food and Drug Administration
4. 実務でよくあるNG事例と防止策
❌ NG例 1:Prior Notice未提出
航空貨物や船積み前にPrior Noticeを出さずに到着すると、FDAはその輸入を拒否・差止めする場合があります。
対策:輸入予定日の前に必ず提出し、配送会社名・追跡番号も登録する。
❌ NG例 2:ラベル誤表示・不完全
英語での成分リスト・アレルゲン表示・原産国表示が欠けていたため、現地で差止め/返送。
対策:FDA食品ラベルガイドラインに準拠した英語ラベルを作成する。
❌ NG例 3:FSVP不対応
サプライヤーの安全管理体制を適切に文書化していないため、査察で不適合と判断。
対策:供給者の監査証跡・検査結果・管理文書を整備する。
5. まとめ:規制対応が輸入成功のカギ
アメリカの食品輸入規制は、安全性を守るためのものであり、FDAに準拠した手続きができれば輸入は十分可能です。2025年の変更点としては、
✅ 低額輸入の免除撤廃
✅ Prior Noticeの情報強化
✅ 特定食品の輸入認証ルール
✅ トレーサビリティ制度の延期
が大きなポイントです。これらの対応を漏れなく行うことで、米国市場での食品輸出ビジネスがスムーズに進みます。