関税を削減・免除できるFTAやEPAの活用が一般的になってきた今、「原産地証明書(CO)」の正しい理解と運用は、国際取引のコスト競争力に直結します。
しかし、「COにはどんな種類があるの?」「EPAと一般原産地証明は違うの?」といった疑問を抱く方も少なくありません。
この記事では、原産地証明書の基本・種類・EPA/FTA対応の仕組み・実務での使い分けと注意点を詳しく解説します。
目次
✅ 原産地証明書(Certificate of Origin:C/O)とは?
原産地証明書(CO)とは、その商品が「どこの国で生産されたか」を第三者が証明する文書です。
この証明書は、輸入国側が適正な関税率を適用するために必要とされ、優遇関税制度(FTA/EPA)を使うための「入口」となる重要書類です。
✅ なぜCOが重要なのか?
目的 | 内容 |
---|---|
関税の優遇申請 | FTAやEPAで定められた「特恵関税率」を受けるために必要 |
輸出先の規制に対応 | 一部の国では、原産地を確認できないと輸入できない製品がある |
信用補完書類 | 取引先にとって製品の信頼性を保証する役割も果たす |
✅ 原産地証明書の種類一覧(日本の実務で使われる主なタイプ)
種類 | 発行主体 | 目的 | 特徴 |
---|---|---|---|
一般原産地証明書 | 商工会議所 | 第三国向けや非特恵国輸出用 | 商習慣的に必要とされることも多い |
特定原産地証明書(EPA用) | 商工会議所(または税関) | FTA/EPA利用の関税削減申請に使用 | 各協定ごとの原産地規則に基づき審査される |
自己証明(特定輸出者制度/認定輸出者制度) | 輸出者自身が発行 | FTAにより許可される場合あり | 信頼性が問われるがスピーディー |
Form A(旧GSP特恵用) | 商工会議所など | 一般特恵関税制度(GSP)用(現在日本では終了) | 一部開発途上国向けに利用されていたが現在は縮小 |
✅ 特定原産地証明書とは?
特定原産地証明書は、**EPA・FTAなどの経済連携協定を利用するために必要な「証明書」**です。
主な協定例と用途
協定名 | 対象国・地域 | 発行主体 | 備考 |
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日EU・EPA | 欧州連合各国 | 自己証明可(認定輸出者制度) | REX制度も関連 |
日タイEPA | タイ | 商工会議所が発行 | 原産地規則がやや複雑 |
日インドEPA | インド | 商工会議所が発行 | 都度申請が必要なケースあり |
日インドネシアEPA | インドネシア | 商工会議所が発行 | 申請頻度・数量制限に注意 |
✅ 原産地証明の発行フロー(商工会議所による場合)
- 輸出製品の仕様・原材料構成を整理
- 原産地判定の根拠資料を用意(加工証明、仕入書など)
- オンラインで事前登録(NACCS or 商工会議所サイト)
- 発行申請書類を提出(PDF or 紙)
- 審査(必要なら問い合わせ)
- 原産地証明書の発行・受け取り
📍 FTA用の証明書は協定ごとのルール(原産地規則)を満たす必要があるため、原材料比率や加工工程の証明が必要になります。
✅ 自己証明制度とは?
一部の協定では、**輸出者自身が原産地証明書を発行できる制度(自己証明/認定輸出者制度)**が用意されています。
自己証明が可能な例:
- 日EU・EPA:REX登録 or 認定輸出者による自己証明
- 日英EPA(CEPA):自己証明可
- TPP11:自己証明可(輸出者・生産者・輸入者のいずれか)
✅ 自己証明はスピーディーで柔軟ですが、誤りがあった場合の罰則や追徴リスクも高くなります。
✅ 原産地証明書の記載項目(一例)
- 発行番号・日付
- 輸出者名・住所
- 輸入者名・住所
- 商品名・HSコード・数量・価格
- 原産国(Japan)
- 原産性根拠の記載(WO/PE/CTHなど)
- 商工会議所または輸出者の署名
✅ よくあるミス・注意点
ミス例 | 解説 |
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❌ 一般原産地証明をEPA申請に使う | 特定原産地証明が必要。提出先に応じて確認を |
❌ 自己証明の署名やHSコードが誤っている | 審査NG・FTA非適用となる可能性あり |
❌ 輸出品に対応する協定がない | すべての国・製品でEPAが使えるとは限らない |
❌ 有効期限切れの証明書を使ってしまう | 通関NG・再提出で時間ロスになる |
✅ まとめ:目的と協定で正しく原産地証明書を使い分けよう!
シーン | 適切なCOの種類 |
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第三国向けの信頼性担保 | 一般原産地証明書 |
FTA/EPAを使いたい | 特定原産地証明書 |
自社で証明したい/頻繁な輸出がある | 自己証明制度(認定輸出者) |
輸入者から求められた場合 | 相手国の協定と通関要件を確認して判断 |
📝 実務アドバイス
- 商工会議所のWebシステム登録は早めに済ませておく
- 「EPA協定の有無」→「原産地要件の確認」→「証明書の準備」が基本フロー
- 審査がある場合は余裕を持って3~5営業日前に申請
- FTAにおいて**「誤った原産地証明」はペナルティの対象**になり得るため注意