はじめに|アメリカに食品を輸出するなら「FDA施設登録」が不可欠
アメリカは世界最大の消費市場であり、日本企業にとって魅力的な輸出先です。しかし、食品・サプリメント・化粧品などをアメリカへ輸出する際には、FDA(アメリカ食品医薬品局)の「施設登録(Facility Registration)」が義務付けられています。
この登録は、単なる書類提出ではなく、米国食品安全強化法(FSMA)に基づいた制度であり、違反すると商品が税関で止められる・差し戻される・罰金が科されるなどのリスクもあります。
本記事では、FDA施設登録の基本から申請方法、エージェント選定、更新手続き、注意点までをわかりやすく解説します。
1. FDA施設登録とは?
1-1. 登録の背景
FDA施設登録とは、アメリカ国内に輸出される食品・飲料・サプリメントなどを製造、加工、包装、または保管する施設が、FDAのデータベースに情報を登録する制度です。
この制度は、2002年の「Bioterrorism Act(バイオテロ対策法)」によって始まり、2011年の「食品安全強化法(FSMA)」により、登録更新の義務化などが追加されました。
1-2. 登録が必要な製品カテゴリ
対象となる製品 | 主な例 |
---|---|
食品類 | 加工食品、冷凍食品、飲料、調味料、缶詰、農産物 など |
健康食品・サプリメント | ビタミン剤、プロテイン、機能性素材など |
化粧品類(任意登録) | 化粧水、クリーム、ヘアケアなど(ただしVCRPは任意) |
動物用食品 | ペットフードなども登録対象 |
1-3. 登録が不要な施設
- 単に原料を供給する農場
- 個人使用のための家庭製造
- 研究目的の製造施設(商業目的でないもの)
2. 登録の流れ|初回登録の手順
2-1. 準備する情報
項目 | 内容 |
---|---|
施設名(英語) | 英文表記・正確な法人名 |
施設所在地 | 英語住所表記(郵便番号・市区町村・州) |
担当者情報 | 氏名・役職・メール・電話番号 |
製品カテゴリー | 食品、飲料、サプリメントなど分類選択 |
米国エージェント情報 | 米国在住者(法人)の代理登録先が必須 |
2-2. 登録方法
- FDAの施設登録専用ポータル「FURLS(FDA Unified Registration and Listing System)」にアクセス
▶ https://www.access.fda.gov/ - アカウントを作成し、ログイン
- 施設情報・製品情報を入力
- 米国代理人(U.S. Agent)の情報を登録
- 登録完了後、登録番号(Facility Registration Number)が発行される
2-3. 登録証明(Certificate of Registration)
- FDA自身は公式な登録証を発行しませんが、サードパーティ(民間代行会社)を通じて証明書PDF形式を取得することができます(通関で提示を求められることがあります)。
3. 米国エージェント(U.S. Agent)とは?
3-1. なぜ必要?
FDA登録では、米国国内に居住する「連絡窓口=米国代理人(U.S. Agent)」の情報が必須です。
この代理人は以下の役割を担います:
- FDAからの緊急通知の受取人
- 現地査察・輸入時の連絡窓口
- 登録内容に関する照会対応
3-2. 誰がU.S. Agentになれるのか?
なれる人 | 例 |
---|---|
米国法人 | 輸入業者・ディストリビューター・倉庫会社など |
米国居住者 | 弁護士・行政書士・代行業者など個人も可 |
サードパーティ業者 | 登録代行会社(有料で対応) |
4. 登録の有効期限と更新手続き
4-1. 有効期限
- 登録は「2年ごとの偶数年に更新が義務付けられています(Biannual Renewal)」
- 更新は偶数年の10月1日〜12月31日までに実施
例:2024年に登録した場合、2026年末までに更新が必要
4-2. 更新方法
- 初回登録と同じFURLSシステムからログイン
- 「Update Facility」メニューから更新手続き
- 内容に変更がなければ「No Change」で完了
- 更新をしないと登録が失効し、アメリカへの輸出ができなくなります
5. 登録代行を利用するべきか?
✅ 代行を使うメリット
- 英語入力・分類が難しいと感じる初心者向け
- 米国エージェント込みで対応
- 登録証明書(PDF)も同時に取得可能
- 通関時のトラブル対応経験がある
🔻 デメリット・注意点
- 料金相場:初回 $600〜900/更新 $400〜500程度(U.S. Agent費用込み)
- 過剰なオプションや高額請求業者には注意
6. よくある質問(FAQ)
Q1. 自社製造でなくても登録は必要?
→ はい。たとえば、OEM委託で作った商品を輸出する場合でも、製造工場の施設登録が必要です。
Q2. 登録なしで輸出したらどうなる?
→ 税関で輸入保留(Detention)となり、最悪の場合輸出品が廃棄対象となることもあります。
Q3. 化粧品も登録は必要?
→ 化粧品は義務ではありません(任意登録)。ただし、VCRP(Voluntary Cosmetic Registration Program)に登録することで輸入時の信頼度アップに繋がります。
まとめ|FDA施設登録は「輸出の通行証」
FDA施設登録は、単なる届け出ではなく、**アメリカ市場に商品を届けるための“通行証”**ともいえる重要な手続きです。
特に食品・サプリ・飲料などは、登録を怠ると輸入が認められず、商談が台無しになることもあります。
早めの準備、米国エージェントの確保、偶数年の更新管理を徹底することで、リスクなく安定した輸出ビジネスを実現しましょう。